分離発注
 

分離発注とは、建設会社や工務店に依頼せず、各工事を各職人に直接依頼する方法をいう。
これは、通常建設会社か工務店の棟梁が担う筈の現場監督の役を、現場には不慣れな設計士が担わざるを得ないという点で、施主、及び設計事務所側に相当な覚悟が必要とされる。施主は各職人と各々契約する事になる訳で、トラブル処理や責任の所在において、どなたにでもお薦めできる方法ではない。

そもそも職人というのは、自営業者ではあっても、普段世間から直接受注している訳ではない。懇意の建設会社や職人仲間の伝で、日々の仕事を得る事が殆どで、直に施主と契約する慣例がない。日頃建設会社にいいように手間代を叩かれ、さんざん泣かされている職人であっても、施主から直請となると、そういう意味では社会慣れしていない分、殆ど尻込みしてしまう。しかしながら、彼らも現金さえ間違えなく受取れると知れば、尻込みばかりしていない。
 
      

それでも分離発注という形態を難しいと言うのは、実際には、その時限りの烏合を束ねる事が容易ではないからだ。つまり、バラバラに各職人だけを集めても、阿吽の呼吸の無い者同士なら、当然己の職分のまっとうしか意識は無いし、それを分野違いの設計士が各施工の絡みと流れ、それを熟知した上でリズミカルに指揮するのは難しいのだ。現場の不調和は取り返しのつかないミスを起こし易い。ましてや職人というのは、自分の仕事に対するプライドも高い反面、手間イコール金だとして徹底している。それ故、ほんの一手間をむずがったり、気持ち一つで仕事をしているところがある。普段デスクワークの設計士が、そんな気持ちを掴んだ上でなければこなせない現場監督までをも兼ねるというのは、そういう意味でも難しいのだ。
そして、何より設計事務所は、そもそも施工責任を担えない。施主に対して施工責任の全てを負う事になるのが各職人となる分離発注の場合、瑕疵ややり直しが生じた場合の処理やその費用の点でも、建設会社が工事全般を一括して請け負う場合と違って、複雑になる。  加えて、職人の人柄によってはスムーズに話合う事さえ困難な場合もあるかもしれない。職人からすれば、施主は一見の客にすぎない。常時仕事を世話してもらえる甘味から逆らい辛い建設会社とは違う。
上記理由を考えれば、分離発注をどうしても望みたい場合には、先ず、少なくとも常時、分離発注を主体として行う、あたかも建設会社化している設計事務所を選ぶべきだろう。しかし、どんな設計事務所であっても、矢張りリスクは充分に覚悟するべきだ。
しかし、考え方を変えるなら、そもそも口上手い営業マンを武器に、詐欺まがいの建設会社も多い今日、欠陥住宅に泣かされて建設会社を相手取る事の難しさに比べれば、分離発注によるコスト削減こそ、立ち向かうべき勇気と言えるのかもしれない。
 
だが、是非にも分離発注をしたい施主には申し上げておきたい。お馬鹿なふりの素人作戦は通用しない。少なくともその覚悟は持って欲しい。材の値の高い安いを知り、多少不満を残す部分や、メンテ、日々の暮らし沿っての細かな工夫は、自分でDAYを楽しもうという位の覚悟はして望むべきである。少なくとも私は、そういうタイプの施主でない限り、わざわざ分離発注の苦労を伴に分とうとは思わない。

材の直買いはインターネットも利用できる昨今、誰にも難しい事ではなくなった。
業者が利用する正規のルート、建材メーカーによる建材は、相場というものを崩さない為か決して安価ではない場合も多い。カタログに明示されている各メーカーの正価は、客出し単価であり、実際には、施工業者が資材屋から購入する場合、業者割引で搬入される。即ち、カタログ価格の2割〜6割安で購入される訳である。その分、業者は、サービスと称して客に還元するのも営業ではあるが、あくまで材及び工と、それを使った施工を伴に請け負っている訳なので、手間の容易も難儀も判断できない素人の施主には、そうしたサービスはピンとはきづらい。だから、私の場合、業者の見積で、仕入れ値によるサービス分を考慮していなかったとしても、それに関して言いがかりをつける事はない。材は正価を超えない限りは正当範囲として、私は容認する。 それが不満で、もっと安く手に入る筈だと口惜しくてならない施主も中にはいるのが、そういう人には、自分で直接購入する事をお薦めしている。客出し単価というのは、数量を拾い、それをタイミング良く搬入し、施工とその後のリスクも背負っている施工業者に対する、メーカーの配慮分とも言えるとのだと私は見ている。また、客が自分で入手した材を使ってくれという申し出は、パターン量産のみでローコスト化を図る建設会社を除けば、それ程迷惑な話ではない。構造やサイズ、搬入時期等突拍子もない素人の押付けは、責任上無論拒否されて当然ではあるが、設計士が間に居る場合なら、気兼ねなく、自分で購入する手間を経験してみても良いだろう。  今は、建築資材も広く一般に門戸が開かれ、誰でも、場合によってはアウトレット建材や輸入物等、業者の正規ルートよりずっと安価に購入できる。  但し、一般向けに対しては、運搬費は大抵別途扱いなので、かかる経費、誤入荷や不良品に対するリスク、また業者から指定される搬入のタイミングを正確に守れないと、工程の全てを狂わせる。また、物によっては、数量分のみという購入が不可能で、かえって不経済になるものも少なくはない。こうしたトラブルを回避するには、近隣のDAYを扱う量販店や、アウトレット建材店で現物を直によく検討した上で、購入し、タイミング良く現場に渡すというやり方が、最も得策と言えるのかもしれない。

 
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