設計依頼時のお願い...
 設計依頼を受けるにあたってお願いしている事が三つある。
 一、プランに入る前、抱いている夢や我侭を、現実を無視して語って欲しいという事である。現実には予算や法規、敷地条件が絡む事になるが、すべての夢は`無´という無限から始まる設計のデータとなり得るのである。初対面の設計士にとって、施主の趣味嗜好、生活、施主自身の人となり、家族の状況等を学ぶ事は不可欠である事を知って欲しい。どんな夢も愚痴さえも、設計士にとっては、その先プランを組み立てていく際の大事な判断指標となるのである。
 二、現在のお宅のありのままの生活状況を包み隠さず拝見させて頂く事もお願いしている。恥は忍んで頂いて、あえては片付けない実状況を覗かせて頂く事で、その人の生活に適した住環境を心得る事ができるのである。散らかり具合から、常に散らかる原因を掴み、生活者の苦手とする要素、生活パターン、習性に対処する事が可能となる。例えば家事や整頓が苦手であったり、忙しい人で生活時間にゆとりがなかったりという状況を見て取り、更には親子兄弟の関わりがどうあるかや他人には口にしたくない事情をも察し、施主が言うに及ばないと伝えなかった趣味嗜好を知り得るからである。即ち、さらけ出す程に最適なプランを手にできるとお考え頂きたい。
 三、家族の全員にお会いできる事をお願いしている。同時に、全員に幾つかのアンケートにお応え頂く事により、家族みんなが新居の話し合いに参加し、各々の希望に対する優先順位を選択していく作業に協力して貰う事になる。普通、人は種々雑多で断片的な希望や夢が漠然としていて、聞かれる程に実は自分が何を望んでいるのかさえ混乱してくる。しかし、先ずはそれらの全てを吐き出してもらい、徐々に現実を踏まえてそれらを整理し、設計士の専門知識を助けに、何を優先させ、どう望みたいかをコストや敷地条件に合わせて具体的に選択していってもらう。この過程を経る事が、後の後悔を招かない夢へのプロローグと言える。設計士も又、これらの過程において施主の選択の判断指標を学ぶ。即ち、設計士の設計は施主の選択の上に成り立つ。この様に、実はプランに至る迄が施主の協力なくしては得られない共同作業が必然となる事をお心得頂きたい。
 時には設計士の提案や助言に疑問や理解しかねる事も多々ある筈であるが、必ず納得いく迄よく話し合う事が後悔を残さない。例えば、設計士の出したプランが、自分達の希望を無視しているかの様に思われても、日頃の自分達の生活からは想像も及ばなかった意外な提案であったとしても、実はそれが最も適した新しい生活スタイルである可能性を、じっくりと考えて貰いたい。何故なら私自身の限りにおいては、施主を無視した設計をしないからである。子供がいれば、子供を含めた家族全員の幸せを願わずした設計はあり得ない。
 
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